スーパーマン達、プロと対戦@東大 x 巨人

東大 2 - 9 巨人
8/18 ジャイアンツ球場 観衆約300人(目測)

・プロの打者から三振を奪う、またはプロの投手から打点を奪う
・勉強して東大に受かる

どちらが難しいですか? 僕も含めて大部分の人は、どちらも難しいだろう。
でも僕はその日、確かに見た。東大生が巨人の選手から三振を奪い、タイムリーヒットも放っていた。
あれってスーパーマンだよな。何度考えてもそうとしか思えない。

入場無料のジャイアンツ球場に汗だくの状態で入り、スコアボードでスタメンを見る。ご覧の通り、巨人は2軍のレギュラーで、1番が松本、4番が大田、先発は伸び盛り(と思う)の笠原、育成選手は丸毛謙一ただひとり。一塁側カメラマン席には望遠レンズが並ぶ。おそらく桑田真澄コーチが来ているのだろう。(僕は開始15分前くらいに着いたので、桑田の姿は見ることができなかった)いろいろ注目されているカードなので、「巨人もレギュラークラスを揃えたんだろうね」とはスタンドの声。
僕は来る前、youtubeで『クローズアップ現代』の東大野球部と桑田の特集を見て予習?をしてきた。先発はその番組には出ていなかったが、新聞記事で名前は見たことのある辰亥由崇(高松高)。果たして桑田の言うアドバイスは実践できてるかどうか。
1回は、どちらも凡退。巨人は内野ゴロ3つ。辰亥は直球でも130km行くか行かないかぐらい。巨人の打者にとっては普段と速度域が違い、序盤は少し戸惑っているようだった。それでも2回に大田がヒットで出ると、盗塁等で三塁に進み、隠善の内野ゴロの間に1点を先制する。

かたや東大の打撃陣は巨人の笠原の速球にバットが当たらず、三振多し。スタンドでは東大のOBか、それとも選手の関係者かわからないが応援するおじさん達がいて「笠原を打てないとリーグ戦でも勝てない」と言っている。年齢も4年生くらいだし、ちょうど他大学のエース級と対戦していると想定すれば、全く打てないのはよろしくない。少しは食らいついてもらわないと。
3回表、東大は中杉康仁(筑波大駒場)が初ヒットをライト前に放ち、スタンドがおおっと沸く。やっぱり東大を応援する人は多く来ている。ネット裏にシャツ姿の学生君たちがいるが、あれは部員だろうし、清楚な姿の女子マネも来ている。
打順がまわって2番の西木拓己(灘高)、一・二塁間を破りタイムリーを放ち同点。思わず拍手してしまったが、もったいなかったのは二塁ランナーが本塁で憤死したこと。あんな浅いライト前で二塁から還ってこられるわけない。クラブチームの試合でもこれに似た、勢いで腕を回してしまうケースがよくある。都市対抗予選の金港もそうだった。

東大の辰亥、ここまで丁寧に投げている感じがする。件の番組では「少ない球威をおぎなうため、変化球をたくさん覚えていようとしていた」と紹介されていた東大投手陣だが、見ていても変化球をやたら投げるとか、その結果四球を連発するといったことは全くなかった。桑田コーチの言う「外角低め」に狙って投げようという意図もたしかに感じる。それも3回まではよかった。
しかし4回くらいからボールがややバラつき始める。マウンド上はかなり暑かったろうし体力的にも厳しいかなと思いながら見てたら、高橋洸、井野卓に連打を食い2点を追加される。低めに決まった球は打たれてもフェンスを越えなかった(逆風気味だったせいもある)が、打ちごろの高さに来ると打たれてしまう。
桑田コーチはスタンドには居なかったが、報道によるとネット裏の関係者席にいたらしい。
5回表、笠原から代わった星野真澄から越智大祐が登板し、球威ある球を見せてるなと思ったら死球を2つ与えてしまう。三塁に進められたところで微妙な位置に転がった投ゴロを処理できず(ベースカバーが不在)、3−2と追い上げられる。スタンドが盛り上がってきた。僕はこの試合東大が勝つことはないと思っていたが、ひょっとするといい線までいくかな?と思った。

・・しかし、プロの打者はそう甘くなかった。5回裏に巨人は横川が右中間スタンドに2ラン。辰亥はこの回で降板。
6回にはヒット、内野安打で2点を返され、さらに和田が2ランを放ち4点を追加、9-2になってしまった。
番組では東大の二人の投手が紹介されていたが、4年生の浅井俊一郎(浦和高)がこの時登板し、1球で降板したので(内野フライにうちとる)よくわからなかったが、7回に登板した白砂謙介(修道高)は1イニング投げた。コントロールに苦しんでいるようだったが、三振をとるなどして無失点に抑えた。


東大は守備もしっかりしていて、守備からグダグダになってしまうこともなかったし、それとバントが皆うまい。「朝から晩まで12時間練習」というのを桑田に指摘されて以降やっているかどうかわからないが、クラブチームに比べれば練習時間は確保されているのはよくわかる。中盤以降は普通に力の差が出てしまったが、僕は「ひょっとしたらとんでもない大差試合を見せられるんじゃ」という危惧を少し抱いていたので、それがなくて少しホッとした。
巨人の選手は中盤以降たくさん選手が入れ替わり、試合途中で選手達がスタンドを歩いて帰っていくのが見えた。暑い中スポーツ紙の取材陣もいつもより多く、東大相手ということでやりにくかったと思う。ひとりだけ死球を当てられた選手はいたが、それ以外特にアクシデントもなくてよかった。(あ、でも越智が途中で交代してたな)

桑田は「僕が来たからって特効薬にも劇薬にもならない」と言っている。そんなに簡単に差が埋まったら世話はない。たぶん秋季リーグも苦戦はするだろう。
それでも、例えば巨人の大田は第一打席はヒットを打ったが、次の打席ではゆるい変化球にタイミングが合わず三振を喫していた。他にも、外野フライで巨人の選手を打ち取る場面は多かった。なぜ打たれなかったのか?こういう試合は、考えるきっかけになるヒントがたくさん得られるはずだ。
体格や経験で劣ってても、考えて考え抜いて、他大学に勝つ。そういう野球チームがあったら、それはドラマになる。今度の秋季リーグは、ちょっと意識して見に行ってみようか。