もし、もし金港が都市対抗に出ていたら・・


横浜スタジアムのあの試合のあと、頭の中でぐるぐる試合の光景がたびたびよみがえってきて、返す返すも惜しかった!と思っていた。
三菱重工横浜は企業チームの中ではかずさマジックと並んで最も好きなチームなのだが、それでも今回ばかりはガマンしてもらって・・とつい思ってしまった。金港クラブが前回出場した1950年はまだ企業チームが全盛期を迎える前、昔ながらのクラブチームにかろうじて挑戦権があった時代のことで、それ以来の出場となったら野球界に大変な話題を呼んだだろうからだ。
日本にプロ野球が始まる前、野球の花形は大学野球だったといわれているけれど、大学野球のスター選手も卒業すればその舞台からいなくなる。社会人になった大学野球の選手達を集め、地域ごとにチームを組んで対戦しよう、これが都市対抗野球とクラブチームの原点だ。
横浜金港はそのクラブチームのスタイルを現在も変わらず引き継いでいる。専用のグラウンドは持たないし、練習は週末、公式戦も仕事をおろそかにせず平日の場合はベストメンバーが組めないことがしばしばある。
こういう伝統的なクラブチームが、有名企業が人と予算をつぎ込んで戦うのが当たり前になっている、現代の都市対抗野球にもし出られたとしたら・・
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費用の問題。
横尾弘一氏の『都市対抗野球に未来はあるか』(ダイヤモンド社)によると、出場チームは1チームにつき4000枚の観戦券(チーム券)を購入することになっている。総額はざっと280万(!)。さらに平日ナイターや週末の試合を1回戦にやりたいと希望すると、15000枚、1050万もの金額がかかってしまう。企業のバックアップを有する恵まれたクラブにとってもこの額はハードルが高い。ましてや一般的なクラブチームにとっては、いったいどうやって捻出するのか想像がつかない。
応援団。
ドームのスタンドで繰り広げられる企業チームの応援はいつから始まったものなのかよく知らない。都市対抗=応援団とイメージする人もいるくらい当たり前の光景だが、現在は大学の応援団を借りているケースが多いというのはファンの間では知られた事実だ。
試合とは直接関係はないが、応援団なしで参加するのは十分考えられる。それと、当然ながら社員の動員がない。対戦相手が数千あるいは1万人以上の動員をかけ、華やかな応援をしている中、クラブチームの側はその数百分の一の人数しかいないかもしれない。
平日の試合。
クラブチームは週末と平日とで戦力が異なるというのが全然珍しくない。グラウンド整列で選手が12,3人しかいないとか、企業チームを抑え切るほどの投手が平日の仕事のため参加できず、大差のコールドゲームをしてしまうこともありえる。企業チームは平日でももちろん戦力ダウンは無い。
補強選手。
クラブチームが予選を通るとなると、どこか企業チームが必ず敗退する。そのチームから補強選手を借りたいと思っても、素直にチームに溶け込めるかどうか微妙だと思う。補強要請を受けた選手は、断ることはできないという規定があるらしいが・・
逆に、上記のようにクラブチームに好選手がいたとしても、補強選手は大会2週間前から合流することになっているので、やはり仕事を持っている人はつらい。
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つらつら書き連ねてみたが、改めて見ると、現代の都市対抗はクラブチームが参加することをほとんど想定していないように見える。大抵は予選で振り落とされてしまうので、考慮する必要もなかったからだろうか。
でも今回の西関東予選のようにENEOSの優勝のおかげで枠が3つになり、クラブの1チームが代表決定戦に参加できるというケースでは、「想定外」の事態はありえたわけで、金港が目前で出場を逃したのは僕的には残念だった。 もし金港が出場していたら、上記のような都市対抗の持つ問題点がファンや関係者の目にさらされ、今後の社会人野球のことを考えるきっかけになったかもしれない。
逆に予選が波乱なく終わったなら、例年通りの大会が続くだけだ。