野球版Jリーグ(4)◆都市対抗に企業が求めるもの

今年の都市対抗はクラブチームの大和高田クラブが初出場を果たしたが、それ以外の31チームはすべて企業チーム。
毎年夏の本戦が近づくと、毎日新聞に出場する企業チームについての話題が多く出るようになる。今年は、出場企業のトップへのインタビュー記事が連載されていた。何日かおきに一企業について書かれていたのだが、アーカイブ記事がまとめてあったので、改めてじっくり読んで見た。
時間も紙面も限られたインタビューだが、よく読むと各企業ごとにスタンスの違いが微妙に現れていて興味深い。
都市対抗出場トップに聞く


全部で15の企業のトップの言葉で、最も多かったのが、以下のような言葉だ。(いずれも毎日新聞の記事より)

  • 「『東京ガスグループの一体感を作り出す』とスポーツの企業経営への効用を強調」(東京ガス
  • 「グループ社員の一体感を醸成するかけがえのない機会」(NTT東日本)
  • 都市対抗野球には会社への帰属意識を高める要素が集約されている」(日本生命
  • 「多くの社員が一つの目標(勝利)に向かって一生懸命になれる都市対抗野球は『企業・グループの一体感を高める非常に貴重な 場』」(日立製作所
  • 「大きな会社になればなるほど、会社への求心力がなくなりがち。そんな中、都市対抗野球は求心力が強まる良い機会」(JFE東日本)

そして、これに続いて「東京ドームに各地から社員や家族が○万人集まり云々」といったような様子が語られる。
読んで気がついた人もいると思う。「都市対抗野球」についてインタビューされているにもかかわらず、都市や地域という言葉がまるで出てこないのである。
その一方で、やや異なった意義に言及するトップもいる。

  • 「企業が利益を追求するのは当然だが、その利益をどうやって社会に還元するかも重要だ。」(三菱重工業
  • 「地域との共生は、製造業にとって最も大事なことの一つ。都市対抗に出れば製鉄所と関係の深い地元の方も一緒に応援してくれるので、地域との一体感が高まる」(新日鐵
  • 「社員と家族、地域や取引先などさまざまな立場の人が一堂に会し、オール住友金属グループで応援する特別な機会だから本当に楽しみ」(住友金属鹿嶋)

3つめの住友金属もまたグループのまとまりに言及しているものの、それに加えて地域という言葉が出てくる。そして、上の2つははっきりと社会や地域とのかかわりに言及している。


記事に出てくる企業に限らず、社会人野球の企業チームはどこも、野球部を持つことによって(そして都市対抗に出ることによって)社内の一体感を持たせる装置としたいという考えは持ってると思う。が、それに加えて、企業をとりまく地域を重視しているかどうかは、チームによって差があると想像する。

「各事業所や工場がそれぞれのチームを運営していたが、グループを挙げて支援できる、トップクラスの実力を持つチームを作ろうと、00年までに現在の3チーム(野球、ラグビー、バスケ)に「選択と集中」を行った」(東芝
「『4チームが出ることで4地域が盛り上がる。全国に工場のある企業は、地域とのつながりを大事にした方が良いと思う』と、1チームに統合しない理由を説明する」(三菱重工

ひとくくりに企業チームと言えど、まるで正反対な考え方を持っているチームがある。これはけっこう新鮮な驚きだった。
と同時に、野球版のJリーグ「みたいなもの」を妄想する僕にとって、この考え方の違いというのは結構やっかいだな・・とも思った。
これには、チームを持つ企業をとりまく様々な環境がからんでいそうだ。
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