東大が、4年半ぶりに勝った日@東京六大学 東大x法大

5/23 明治神宮野球場 観衆8,000人


この日は行こうかどうしようか迷っていた。
前夜に2軍のナイターを見たばかりのうえ、東大の相手は法政。なんか勝てそうに思えなかった。いや勝てそうに思えない相手ばかりとはいえ(笑)明治とか早稲田、法政などより慶應、立教のほうが勝てる可能性が高そうな気がするのだ。気がするだけ。実際には勝てない。
でも、なんとなく電車に乗り、結局なんとなく外苑前に来てしまった。宮台康平(湘南)が見られればいいやくらいの気持ちで。
いやあ、カンていうのは、当たらないものですね。


東大 6 - 4 法大


興奮しすぎてところどころメモをし忘れ、記憶だけで書いてる箇所があります。

法政は自力優勝はできないとは言え、まだ優勝の可能性は残っている。東大に連勝して、なおかつ慶應が早稲田に連勝すれば巴戦の可能性が残っていた。消化試合ではない。
東大の先発が山本俊(西春)と聞いてちょっとだけ落胆した。彼は先発のときはあまり良くなく、むしろリリーフのときに結果を出していた。宮台が試合を作り、100k以下の投球ができる三木豪(多摩)が翻弄し、140k超の山本がリリーフというパターンが良いと思ったのだが。
しかし、山本は試合を作ってみせた。
初回から最速146kのストレート。前回見たときは真ん中に集まった球を慶應打線に集中打を浴び降板したが、今日は2回に1点取られただけ。
逆に東大がこの試合最初のヒット、さらに2安打目と、ちょっと期待させる立ち上がり。

法政の森田がどうもボールが先行しがちで、流れを持ってくる気配があまりない。山本が悪くないので、いつもの「序盤から流れが相手に行ってしまうパターン」がない。応援席も、そんな雰囲気を感じとったか元気がいい。先制はされたが、食らい着けば相手は焦る。そう思っていた。
5回表、好投の山本が投手強襲の当たり→グラブを当て転々としているあいだに一塁セーフで無死一塁。ここで代走。こういうちょっとした流れの差で試合が動くんだよなと思っていたら森田が四球を出す。さらにバントで二・三塁。これは・・・どうする。
飯田裕太(刈谷)がバント。しかしファウルだ・・と思っていたら・・ あれ?ランナー二者生還?ファウルじゃない!暴投だ!法政の監督が抗議するが認められない。まさか、こんなかたちで逆転するとは。5回表で2-1となり、その裏、マウンドに上がった三木豪が100〜110k台のアンダースローで法政を抑える。順番は違うが、思ったとおり山本と三木の速度差40kmのリレーが効いた。これは、ひょっとするといけるかもしれない。
・・・なーんて思って期待を裏切られた試合を、あらゆる試合で見てきたので、まだ僕は全く安心してなかった。

6回裏、満を持してというべきか、宮台が登板。僕は、後を彼に託すと思ってた。しかしこのプランが崩れる。初回こそよく抑えたが、7回に直球を狙われタイムリーと犠牲フライで3点取られてしまう。
万事休す・・


・・・のはずだったのに、法政は自ら流れを手放す。8回に死球と四球で1死二・三塁のピンチを迎えてしまい、東大の四番・楠田創(桐朋)がライトへの大きな犠飛でまず1点。
そして、5番の山田大成(これも桐朋)、完璧な当たりが右中間を破り、同点!飛び上がって拍手してしまった。先制されて、逆転して、一緒に心中しようと目論んだ投手が打たれたのに、再び追いついた。三塁側はものすごい大騒ぎ。 法政のベンチも見たが、完全に表情が凍りついていた。


僕はネット裏でどうしたものかと思っていた。東大は山本も宮台も使ってしまった。登板したのは柴田叡宙(洛星)。今年すべての試合で中継ぎ登板を果たしているが、残り2イニングを彼で抑えきれるだろうか?

だがそれは杞憂に終わる。法政は硬くなっていたのかもしれない。普段通りの力が出せていれば、おそらくもっと打てていたと思う。丁寧に投げる柴田に対し、凡打を繰り返してしまった。
「普段なら負けるはずなのに、おかしいな、おかしいな」地力に勝る相手に勝つには、終盤まで最少得点差で粘り、この精神状態に持っていくしかない。
たぶんそれは、応援団と、ネット裏の住民の後押しのおかげでもある。柴田がストライクを放るたびに、すごい歓声が上がるのだ。試合開始当初に比べて、なんだか三塁側の数が多くなってきたんじゃなかろうか?


運命の10回表。先頭の長藤祥悟(山形東)が投手の足元を抜くヒット、続く飯田もバントの構えから一・二塁間を見事に抜いてヒット。バントで1死二・三塁。三塁側の応援歌の音圧がすごいことになってきた。

このギリギリの場面で次打者の楠田とランナーふたりに、浜田監督が指示を出す。この試合浜田監督はよくベンチを出てきた。あとで報道を見たら、「ゴロならスタート」の指示だったらしい。
楠田、セカンドへ強い打球。三塁ランナースタート。法政のセカンド、一瞬だけ!一瞬だけ落とした!バックホームセーーフ!
そして次の山田大成、一ゴロ、バックホームもこれも本塁セーフ。この場面、なんと野選が二つ続いてしまった。6-4。さあこの裏逃げ切れるか。

この日のMVPは、個人的には4番手投手・柴田にあげたい。
連敗脱出がかかる試合、興奮するスタンド、慣れないリード場面の登板。緊張する要素ばかりだったこの終盤、彼はまったく緊張するそぶりも見せず、法政をわずか1安打に抑えてみせた。特に10回裏、フライふたつで2アウト取ってみせて、内野手の手を煩わせる事がなかったところは見事だった。最後の打者は、三振。


僕はOBじゃないけど、負け続けても応援し続けた応援団とネット裏のファンの人達に、おめでとうと言いたい気持ちになった。
連敗で悔しい気持ちだったのは選手だけでなく、彼らもそうだった。
本当に久しぶりに、相手校より先にエールを送る団長さん。よかったねぇ。


あえてクールに言えば、94連敗を止めたひとつの試合が終わったに過ぎない。連敗を止めたからといって、さあこれで最下位脱出のメドがついた、とは思えない。赤門旋風を時々起こしていたころの実力差に戻ったとは言えないだろう。またあすから連敗が続いてしまうことだってありえると思う。
でも選手達は試合に勝った。もう彼らは「勝ったことがない、勝った記憶がない、勝ち方がわからない」という精神状態ではないのだ。それは重要なことだと思う。

スタンドを出ると、東大ファンとか親御さんたちとかOBとか報道陣たちが選手を出待ちしてすごいことになっていた。このときの素材がNHKのニュースで流れていた。まるで優勝しちゃったみたい。