市民球団という夢(2)

NFLに所属するグリーンベイ・パッカーズNFLを全く見たことのない僕は、名前をうっすらと知っているくらいだ。(他に知ってるのは49ersくらい)
市民球団という言葉を検索していて出てきたこのチーム、ちょっと調べただけでもなんだか興味のひかれることが書いてある。

  • グリーンベイという街は人口わずか10万人。全米プロスポーツの中で最も小さいフランチャイズながら、なぜかNFLのなかでも人気は1,2位を争う。
  • 本拠地のスタジアムは1960年以来毎年ずっとチケットが売り切れる。シーズンチケットの順番待ちに40年を要するとも。
  • NFLの優勝は史上最多の13回を誇る。
  • チームオーナーはいない。親会社もない。取締役会を持つ公有企業であり、実質的にチームの経営をつかさどる役員は、球団社長一人を除いては全員無給である。
  • 発行株式は100%市民が持っている。株主が約11万人以上いるが、この株は売買が禁止おり、おまけに配当金が出ない。あるのは株主総会における議決権だけ。
  • 所有できるのは個人だけ、そして1人が持てる株の数に上限がある。
  • しかもこの株、持っていてもシーズンチケットの権利がない。株主優待もない。グッズも安く買えない。

最初この話を聞いたとき、冗談か、何かウラがあるのかと思った。
アメリカ広しといえども四大プロスポーツの中で唯一の事例ということで、例外中の例外と呼ぶべきなんだろうが、にしても日本のプロ野球Jリーグに慣れた身からは想像できない。
12球団のファンの皆さん、貴方は「なんにもおまけがつきませんが、お金が必要なので株を買ってください」て言って売りに出された1株25000円の株(パッカーズの株は最低単位250ドル)を買いますか?
買うっていう人もいるかもしれないが、「いやいやちょっと待ってよ」と身構えるのが普通だと思う。
・・普通だと思うのだが、こういう事例があるのを知ってしまうと、「スポーツを観るということ」とは何かという、小難しいテーマについて頭を巡らすことになる。僕のこの普通の感覚は、正しいんだろうか?


パッカーズの株を買う人達は、何にお金を払っているんだろう。少なくとも「損か得か」っていう考え方はそこには存在しないような気がする。
人口10万人という小さな街のチームが大都市のチームに戦いを挑む姿が「ダヴィデとゴリアテの神話のように」支持されているというのもそうだろう。歴史もある球団だし、幾度も危機を乗り越えてきた唯一の市民球団という個性が、さらに人気を呼ぶのかもしれない。月並みな言葉だが、「奥が深い」としか言えない。本当の感覚は米国人に聞かないとわからない。


日本にこういう市民球団が生まれるには何が必要なんだろう。よく言えないのだが、「スポーツに対するリスペクト」というのが、日本にはまだまだ足りないんじゃないかという気がしてならない。
損得を超えた感情というのかそういうものが「普通の感覚」になってはじめて、出てくるんじゃなかろうか。


最近知ったこの本、読んでみようかと思ったが、なんだか買う気をなくしてしまった。