ピッチャーって、スピードじゃないんだ@都市対抗野球 決勝

富士重工業 0 - 2 西濃運輸
7/29 東京ドーム 観衆30,000人

何年かぶりに都市対抗の決勝に行った。
なぜ行ったかというと、西濃運輸富士重工という、近年にない新鮮な組み合わせだったことと、天覧試合だったからだ。これがENEOSとNTTだったら、まず行かなかった。
富士重工は太田の北関東予選を見てもわかるとおり。そして西濃運輸も、流通業という業態にしては珍しく大垣市という地元にしっかり根付いているチームだ。企業チームのなかでもきちんと「地元」を持っているチーム同士の決勝だったのが新鮮だった。

ずいぶん入ったなぁ。ネット上では、東京とか神奈川じゃないチームだからおそらくそんなに入らないだろうという意見が多かったが、フタを開けてみれば外野席までほぼ満席だった。ちなみに、3階席にも人を入れていたのは意外だった。天覧試合なので、上から陛下を見下ろすかたちになってしまうのだが、そういうのは気にしないみたいだ。
それから、警戒も厳しいのではないかと思ったが、通常の手荷物検査のほかに、手持ち式の金属探知機をあてられただけだった。

僕が入ったときはすでに4回。試合展開が速い。それはおそらくこの人のせいだ。
西濃運輸のエース、佐伯尚治(九州産業大)。2年前に僕が大垣まで見に行ったときも投げていたエース。この人がマウンドに君臨していたからだ。
球速は、最速でも130前半。他は110キロ台の変化球ばかりだ。ところが富士重工は全くといっていいほど、とらえられなかった。
なぜ打てないのか。試合の後に思い出した。あの北関東予選、全足利の黒沼克誠をうちあぐね、1点しか取れなかった試合。あのときも僕は、ネット裏で見ていてなぜ打てないのかよくわからなかった。こういうタイプの投手が苦手だったんだろうか。

富士重工の先発・猿川拓朗(東海大)。この人もよく投げたが、終盤にタイムリーで追加点を奪われ降板した。きょうばかりは相手が悪かった。
猿川の後は、新日鐵住金鹿嶋の石崎剛が登板し、149キロとか150キロとか速い球を連発し、スタンドを沸かせた。
球の速いピッチャーが出てきて、球速表示に高い値が出ると、それだけでスタンドは「おお〜っ」となる。あの大谷翔平が160近辺を出しただけでYahoo!のトップを飾り、スポーツ紙に大きな文字で球速の数字が躍る。ドラフト予想の記事では、必ず球速の数字が語られる。
そんなスピード自慢達より30キロも下回る佐伯が、結局富士重工打線に3本しかヒットを打たれなかった。
野球って不思議だと思う。今さら何を言ってるんだと言われそうだけど。



最後の打者をレフトフライに仕留め、駆け寄る西濃ナイン。優勝の瞬間は久しぶりに見たが、やはりいいものだ。マウンド上で泣き崩れる選手も。西濃運輸というと、東海地区の強豪に囲まれて苦労していた印象が強い。あの大垣のスタンドに来ていた、年齢層やや高めのファンの人達も喜んでいるだろう。
東海地区といえば、広域複合企業チームとして活動していた東海REXが久々の出場を果たした。地域に根付いたクラブチームも3チーム出場し、決勝はこんな組み合わせになった。今年は、そういう年だったのかもしれない。
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翌日、新聞記事によると、天皇陛下はこんなことを質問されていたという。
「緩い球は打ちづらいんですか」
さようにございます。投手というのは、決してスピードだけではございません。