地元密着がここにも/JABAベーブルース杯(その2)

西濃運輸 0 - 5 東邦ガス
5/4 大垣北公園野球場 観衆約500人(目測)

スタンドの最上段からスコアボードの方を見ると、遠くに「SEINO」の看板が小さく見える。あれはたぶん本社の建物だろう。
長良川球場で中日のコールド負けを見せられたあと、そのまま第3試合を見ることもできたが、僕は最初からここ大垣に見に来ることを決めていた。それは、「大垣で西濃運輸の試合を見る」という目的があったからだ。


大垣駅を出て、北口から大きなショッピングビルに向かう。ここは非常に大きいものでアピタなどが入店しているが、このビルをずっと歩いて抜け道を渡るとすぐに大垣北公園の入り口。もうすでに試合は進んでいると思ったが、3時半になるというのに先発オーダーの発表が聞こえてきた。ずいぶん遅れているんだな・・
外にはほとんど誰もいないなかスタンドへ入る。入ってグラウンドを見たとたん、「うわっ これはイカん」と思った。

これは試合中の写真だが、ここのバックネット、金網が塗装されておらず地金がむきだしになっている。だから光が当たると反射してとにかく見づらい。これは野球場としてはだいぶポイントが落ちる。まいったな。
それと、スタンドと隔てるフェンスが、外野部分を除いてラバー化されていなくて金網になっている。記憶をたどってみたが、他の球場では見覚えがない。中日がこの大会に参加するようになっても、中日の試合がすべて長良川で行われてきたのはおそらくこのためだ。この球場、駅から近いうえに環境ものんびりしていていいと思ったので、この2点だけは改善してほしいところ。
この大垣の第3試合は西濃運輸東邦ガスの対戦。スタンドの大きさが違うので比較しづらいが、観衆はたぶん長良川と同じくらいいる。ただし明確に違うのは声援の数の差で、ここは圧倒的に西濃運輸への声援が多いのがわかる。

西濃運輸という会社は岐阜県高山市で創業し、3年後の1933年に大垣市に移ってきたとある。大垣は(位置的に)日本の中心に近く、トラック運送に有利な場所という狙いがあったらしい。それから、名古屋や岐阜の中心などへ移ることもなくずっと大垣に本社がある。上の写真はまさにその建物だ。
地域に根ざした社会人野球というと、たいていは工場とか製鉄所とか(昔だったら炭鉱とか)、ものづくりの会社のことを指すのが普通なので、流通業でこういうケースは珍しい。僕が大垣に試合を見に来たのは、このチームの地域密着ぶりを見てみたかったからだ。結論から言うと、予想通りだった。
スタンドには「カンガルー会」の青いキャップを被ったファン(年齢層は高め)があちこちに見られるし、一塁側にはまとまった数の応援団がいる。そして少年野球チームが、西濃がヒットを打つたびに沸いている。きっと地元で野球教室をしてもらっている子たちだろう。

僕が知っている西濃の選手は投手の佐伯尚治(九州産業大)ただひとり。この日も中盤から出てきた、右のサイドスローであり、名前を見かけないのは珍しいんじゃないかと錯覚するくらい、よく試合結果に出てくる。関係ないが、この選手のプロフィールを見ると経理所属とある。ソロバン弾きながらエースも務めるとは、考えてみればけっこう凄い。
ただこの日はどうもコントロールが良くなかったようで、球審の腕がなかなか上がらない。5回にはファウルで粘られるなどしてタイムリー2本で2点を失う。
「佐伯君がコントロール悪いとはえらいねえ」とスタンドの声。えらいとは? 調べると、東海地方の方言で(体調が)悪いとか、苦しいとかそういう意味らしい。
目の肥えた地元ファンの声に囲まれながらスタンドにいると、同じ社会人の大会でも保土ヶ谷で神奈川の企業チームを見ているのとは雰囲気が違うのがわかる。地元を応援する気持ちを強く感じるという点では足利のスタンドにも似ているし、企業チームで言えばかずさマジックの熱心さにも通じるものがある。

社会人野球は企業どうしの試合だから、都市対抗といっても名前だけだよ、という意見はもっともそうに聞こえる(実際そういう企業がほとんどだし)が、どっこいそこには例外があって、こういう土地の試合を生で見れば「ちゃんと都市対抗してる所もあるんだ」というのがわかってもらえると思う。
願わくば、クラブチームも含め、「都市対抗してるチーム」がもっと増えてくれるといいのだが。
この日は翌日の山登りのため宿泊地まで移動せねばならず、6回くらいで球場を後にせざるを得なかった。雰囲気が気に入ったので、もっと見ていたいと思った。