さらば、湘南シーレックス

イースタンリーグ公式戦(最終戦
湘南 1 - 2 巨人
ジャイアンツ球場 観衆1,651人


とうとうこの日が来てしまった。湘南シーレックスの最後の試合。
前日まで雨が降っていたが、この日は朝こそ曇りで肌寒かったものの昼ごろから晴れ初め、球場に着くころには快晴に近かった。

前日に浦和ロッテが4年ぶり8回目の優勝を決め、結局湘南も巨人も優勝できなかった。最後の試合は消化試合ということになってしまったが、きっと多くのファンがいるだろう。京王よみうりランド駅を降りて坂道をあがっていくがファンらしき人をあまり見かけない。やや拍子抜けしつつ上がっていくと急逝された木村コーチの手形のところに誰かが花を手向けているのを見かけた。あれからもうどれくらい経ったろう。はやくもイースタンのシーズンも終わりだ。
球場は思ったとおりたくさんのファンがおりスタンドは7割は埋まっている感じ。売店は長蛇の列。この売店も今年最後の営業だろうか?
先発は巨人・笠原将生、湘南・高崎健太郎。笠原は今年よく見た記憶がある。先発の柱として育てているんだろう。高崎は日産自動車の出身だが、同じ日産出身の三橋直樹は昨年戦力外になり、いつのまにかBCリーグの富山で野球を続けていた。神奈川の社会人出身は彼ひとりになってしまった(はず)。

1回裏、ランナーを一塁に置いて巨人は長野久義。「日産vsホンダだ」と内心思ってしまう社会人ファンは僕だけではなかったはず(でもないか)。バッティングの調子を落として2軍に落ちていたがライト線へタイムリーを放ち先制。しかし高崎はこの回以降は非常に安定しており5回まで巨人を寄せつけなかった。
湘南は三塁側だったが観客は非常に多く、もちろん応援団も来ていた。応援団でなくとも、湘南側のスタンドにはもはや顔を覚えてしまった人たちが何人もいる。みんな湘南の最後のゲームを見に来たのだ。当然のように。そして応援も横須賀のスタンドと変わらない。

しかしここは巨人のホームだというのに、「ジャイアンツ球場の巨人ファンてこんなにおとなしいのか?」と思うほど静かだった。応援団がいないというのもあるのだが、攻撃時にもなんかシーンとしている。ひょっとしたら、2軍の試合の大部分はこれが普通なのかもしれない。シーレックスが特殊なだけで。あと熱心なのは鎌ヶ谷か。
4回に湘南は1点を返し、高崎は5回まで投げた。1-1で迎えた6回、湘南は小山田保裕(城西大―広島)をマウンドへ送るがここで大声援。1人を抑えて降板すると「お疲れ様〜」の声。今年でやめるのだろうか?いまネットで見たがそれらしき情報はなかった。
その後代わった杉原洋から長野が初球を叩きまたもタイムリー。1塁から大田が一気に帰って2-1の勝ち越しを決める。

そしてリードされた7回、ランナーを置いて代打に佐伯貴弘が登場し三塁側のボルテージは一気に盛り上がる。横浜ひとすじ18年目、戦力外通告を受けてこの日が2軍の最後の日。巨人ファンも声援を送る人がいるなか打席に立つも内野ゴロに。しかしベンチに戻るときに暖かい声援と拍手が送られる。もう7回だし、これが最後の打席かと思っていた。
湘南は巨人の笠原を崩せそうで崩せず、ランナーのけん制アウトなどもあって点が取れない。笠原はコントロールもそれほどなかったが大崩れせずにリン・イーハウにつなぐ。
8回巨人は星野真澄バイタルネット―BCL信濃)をマウンドへ。左腕からキレの良さそうな球を投げ3者凡退に。彼も独立リーグから育成選手上がりで1軍へ行って今年話題になった。
そして9回2アウト、湘南は今年で戦力外となった野口寿浩を代打へ。声援の中三遊間を破るヒットで応える。三塁側、再びボルテージが高潮!4番・下窪をはさんで佐伯の打順だ。

「佐伯にまわせ〜」という球場全体?のプレッシャーの中、下窪も抑えのレビ・ロメロも大変だったと思う。下窪はよくボールを見極めフォアボール。いや、ひょっとしたらロメロか捕手の鬼屋敷がわざとまわしてくれたのかもしれないと今になって思う。
三塁側は、ベイの佐伯応援歌に包まれた。・・しかし、つまらされてファーストゴロ。最後、佐伯とロメロがどちらからとなく握手を求めた。
一瞬の静寂。湘南シーレックスの歴史が終わった。


20日の横須賀最終戦でセレモニーを既に終えていたせいもあって、この日はスタンド前に整列、礼をしたのみで胴上げなどはなかった。佐伯、野口は、現役続行を求めている。


最後に一枚。佐伯がベンチに戻ってくる際、スタンドに向けて帽子を上げて応えたシーン。まったく偶然だが、手前に日産自動車のうちわが写っている。都市対抗予選や本戦の時、日産がいつも配っていたうちわだ。湘南、日産、そして佐伯貴弘と、去りゆく、そして去ってしまったものが一枚に写っている。
「横浜の2軍が独自の名称をつけ、独立採算を目指す」というニュースを知ったときはそれほど期待を抱かなかったものの、エメラルドグリーンのユニフォームの美しさに見とれ、そして社会人野球の日産自動車との歴史的な交流戦には本当に興奮させられた。そして湘南独自のキャラクター「レック」、従来の「一軍の調整の場」とのイメージを覆す、ボールパークのようなスタジアム。2軍だけのファン感、ヒーローインタビュー、ケチャップさんのMC、イニング間で読まれる応援メッセージ、YMCAが流れるダンスコンテスト、数々のイベント。どれも、アメリカのマイナーリーグのような野球場を目指そうという意欲的な試みだったと思う。それらを単に「うまくいかなかった」と片付けるのを正しいとは思わない。それはこの日の、湘南と巨人の声援の差にも現れていると思うから。
僕と、そして他の人のおそらく大部分も、「横浜ベイスターズのファーム」を応援しているのではなく、「湘南シーレックス」を応援していたと思うから。
いや楽しかったですよ、湘南シーレックス

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