全足利クラブ(その2)
社会人野球と一言で言うけれど、実は実態はチームにより様々。
このことを知っているのは、世間の野球好きの中でもほんの一部、社会人野球好きの人くらいだろう。
野球通の人であってNPB2軍の試合を見に行くという人でも、「社会人=都市対抗」という固定観念が刷り込まれて入る人は多いと思う。
社会人野球とは企業が参加する野球であり、東京ドームに大勢の社員がつめかけ、大音量の応援歌とチアガール・・
社会人野球には、大きく分けて「企業チーム」と「クラブチーム」がある。
上記のように企業が会社的にバックアップをしているチームは、全国に約80チームくらい。昨年で休部(廃部ではない)してしまった日産自動車もそのひとつ。
クラブチームはその3倍以上存在する。しかも、年々増えつづけている。
クラブチームの大部分は、言わば同好会レベル。専用のグラウンドなどないし、集まれるのも週末だけ、試合も全員揃うことの方が珍しいくらい。
資金的なバックアップもない。本当に野球が好きでやっている、本物の「アマチュア野球」だ。
だが中には例外もあって、クラブチームといえども企業チームとそれほどレベル差がなく、練習環境やバックアップ体制も整ったチームが少数ながら存在する。
毎年の全日本クラブ選手権の「常連」にはそういったチームが多い。
例えば、
欽ちゃん球団こと茨城ゴールデンゴールズ
元メジャーリーガー野茂英雄氏が自費でつくりあげた、NOMOベールボールクラブ
奈良県の大和ガスという会社が中心となってつくった、大和高田クラブ
などが代表例だ。これらはいずれも、比較的自由に使えるグラウンドを持ち、自治体や企業のバックアップもあり、応援する人たちも多い。そして何より知名度がある。
その中で、全足利クラブというのはちょっと特別な存在だ。
創部が1956年というからもう54年目。大和高田は1997年、GGとNOMOは21世紀に入ってからの設立だ。
全日本クラブ選手権は出場29回、優勝10回といずれも全国最多。企業チームを破って都市対抗にも一度出ている。
プロ野球選手も小倉恒(ヤクルト-オリックス-楽天)、岡田幸文(千葉ロッテ)と2人輩出している。(小倉はドラフト史上初のクラブチーム出身者の指名)
市営球場が夜間使えるらしく、平日は毎晩練習できるらしい。
そもそも、足利市役所内の野球チームが母体なので、事務局はいまでも市役所の中にある。
ホームページを見ると、選手の紹介欄に所属先の企業名が書いてある。単なるスポンサーでなく、選手の勤務先となることでチームを支えているのだろう。
上記3チームも含めた近年のクラブチームにこういった例が見られるし、独立リーグでもオフシーズンに協力企業で働くという形態があるようだ。
全足利が昔からこういった形態だったのかわからないが、かなり先進的な事例だと思う。
・近年クラブチームが増加する以前から50年以上の歴史があるだけでなく、強豪でありつづけている。
・地元自治体の支援もあり、支える企業・団体も多く存在する。
・クラブチームでありながらプロ野球選手も輩出している。
こういうアマチュアスポーツチームを僕は他に知らない。
他のスポーツならあるのかもしれないが、少なくとも野球では知らない。
(つづく)