苛酷・入れ替え戦@東都大学リーグ 青学大x専修大

青山学院大 2 - 4 専修大
11/8 明治神宮野球場 観衆約3,000人(目測)


僕が大学野球の「入れ替え戦」を見たことがない。
最もよく見る六大学には入れ替え戦がないし、他リーグもそれほどひいきのチームがないので、あまり関心が湧いてこなかった。
でも入れ替え戦こそ、大学野球のキモが詰まっているという人は多い。
先月、伊勢原まで見に行った専修大学が東都2部の優勝を決め、11月8日の入れ替え戦に出てくる。ちょうど良いことに都内に用事があり、試合は夕方の4時からなので問題なく見られる。というわけで行ってみることにした。

この日は東京都高校野球秋季大会が2試合行われたあと、入れ替え戦が行われる。入場料700円で3試合すべて見ることができるというお得な日だった。二松学舎大附と関東一の延長最終回、関東一が2死2、3塁と攻めたが得点ならず試合終了。観客は多く5000人以上はいたと思うが、試合が終わると同時に大量に減ってしまう。なんで大学野球より高校野球の方が人気高いんだろうなっていつも思う。

夜から雨の予報で、しかも寒い。それでも青山学院、専修とも応援がそれなりに来てくれている。比較すると専修のほうが1.5倍くらい多い。ここへ来る前に専修大野球部の応援掲示板を見てみたら、皆さんかなり意気上がっている。勝てば2年ぶりの1部昇格で、かたや青学は降格危機という状況では、応援はやはり追い上げる方が熱が上がるかも。


予定通り16時に始まった試合は青山学院が岡野祐一郎(聖光学院)、専修は角田皆斗(栃木工)。僕がこの前伊勢原で見て気に入った投手だ。
先制点は青学。先頭四球で出た小林諭尚(日大藤沢)が盗塁、その小林を3番・ 吉田正尚敦賀気比)がライト前タイムリーで還す。
神宮のしかもナイトゲームという環境はふだんの二部リーグと違うし、やや緊張気味ではないのかなと思う。
しかし2回の角田は落ちる球が冴え3連続三振。3回も2三振を奪い、3回までで6つの三振を奪う。2部のMVP&最多勝投手が1部相手にどこまで投げられるか、それも興味のひとつだったりする。

専修は2回に先頭が二塁打を放つも、青学のレフト吉田の返球が良くタッチアウト。3回もランナーを出すものの岡野の牽制に刺されるなどもったいない攻め。青学はランナーが出ると積極的に足をからめてくる。たしかこの試合計4盗塁。
青学の岡野はストレートの最速が140台前半が出るものの、変化球の割合が多い。時折投げる牽制球のタイミングが良くて、打ち気をそらすのがうまいと見えた。前半は青学が押し気味に試合を進める。
5回表、青学の山口雄大(三重)が一塁線バントヒットで出る。盗塁で二塁に進んだあとに角田が暴投。キャッチャーが処理をもたついたのか、隙を見て山口が一気にホームイン。2-0とする。やはりこれが一部の壁だろうか。青学は試合巧者だ。

5時になるともう完全にナイターになり、そして寒い。ネット裏一塁寄りには専修OBの熱心なおじさん達が見ている。「僕らが学生のころ、日本一になったんだよ。もう40年前だけど(笑)」と前にいた別の女性ファンに語りかけるおじさん。1989年春季を最後に1部優勝から遠ざかっている古豪を現役生は復活させることはできるか。おじさん達の想いを前に、6回表に角田はまたも2三振を奪う。


6回裏、おじさん達の「重野!一発いったれよー!」の声を受けた直後、重野雄一郎(専大松戸)が2ボール1ストライクからの甘いストレートをジャストミート。左中間スタンド中段に飛び込む見事なソロを放つ。一塁側は一気に盛り上がるが、岡野は動じず、後続を2三振。流れを渡してたまるかという明確な意志を感じる。
「これが入れ替え戦か」
このガチンコ勝負、リーグ戦の試合というより、都市対抗予選のあの緊張感に似ている気がする。

流れを変えたのは角田の力投だったようだ。
中盤は変化球主体に変えたかと思ったが終盤になり再び直球で押しまくるようになる。逆球がちらほらあったものの、常時140km台前半を保ち最速は145km。「低めにイイ球が来てる!」と僕はメモをした。
7回裏、岡野は先頭に四球を出す。バントで送られたところで青学は左の福本翼(大阪桐蔭)にスイッチする。左打者が3人続くためだが、2死1,3塁とされ、9番の三浦拓馬(札幌第一)がストレートを右中間に飛ばしとうとう同点にされた。同点のままいよいよ終盤へ。


8回表、簡単に2死を取ったところで吉田正尚に高めの球(ボール球かも)を左中間三塁打される。2死だが同点で三塁。四番の安田紘規(天理)を迎えた角田はおそらく腹をくくったんだろう。落ちる球を捨て、ひたすらストレートで攻め、ファウルで粘られても逃げず、最後はキャッチャーフライに仕留めた。いい勝負根性をしている。

力投が流れを呼ぶというフレーズをよく見るが、この試合は典型的なそれだった。8回裏に専修は1死からエラーでランナーを出し、三振で流が切れたかに見えるも、5番・渡辺和哉(文星芸大附)が甘い球をとらえ逆方向に強い打球。ライトスタンドに飛び込む逆転2ランとなった。しゃがみこむ福本、一番の盛り上がりを見せた一塁側。この回2三振を取っていたものの、最後は失投だったかもしれない。
僕は専修の卒業生ではないしファンでもなかったけれど、劇的な展開に思わず拍手してしまった。


9回表、最後の打者を三振にとり、専修が青学を4-2で下した。これであと1勝すれば、専修が神宮球場へ復活し、青山学院は「練習グラウンド」で公式戦をやることになる。
入れ替え戦のあるリーグって本当に苛酷だ。今年からは特に。

球場の外に出ると、出待ちのファンがものすごく多い。この夜はうまい酒を飲んだおじさん達が多かったんだろう。いやもうすでに出来上がっていたみたいだが。