前橋のオープン戦で独立リーグの危うさを想う


この前、アイランドリーグの高知と四国銀行の対戦が楽しそうで羨ましいと書いた。
それでというわけでもないが、群馬ダイヤモンドペガサス全足利クラブのオープン戦があったので前橋まで遠征してきた。どちらも今年初めての観戦で、勝ち負けよりも仕上がり具合がどうかが気になった。今年ソフトバンク入りした清水貴之が群馬に入った年に対戦があってから、たしか2回目の対戦。


全足利は3月頭からオープン戦を始めていてもう何試合かこなしたが、ペガサスはこれが今年最初の実戦。スケジュールを見ると3月は合同自主トレが続き、キャンプインは4月1日からになっている。この始動の差が試合に出た気がする。
ペガサスのエース・堤雅貴(高崎商業高)は先頭へいきなり死球。その後の投球も抜ける球や浮いた球が多く、四球から犠牲フライで1点を献上。 緩急をつけるなど工夫を重ねるも、どうも球数が多くまだ仕上がっていないように見えた。以前見た印象がとても良かったので、こんなものじゃないだろうという気がする。
全足利はこれも柱となる庭月野隼(樟南高関東学園大)。去年見たときに感じた、マウンド上で雰囲気があるとの印象はそのままだ。球種も多く、実によく打ち取っていく。けん制とフィールディングもうまいと思う。この日は7回まで投げて2失点も、うち1点はエラーがらみ。都市対抗予選が楽しみだが、ひょっとしたら秋にドラフトもあり?かもしれない。
それと見たかった選手がもう一人、昨年まで千葉ロッテの育成だった全足利の吉田真史(太田工業高)。スタメンで出ており、登録は外野手だがこの日は5番DHだった。
2回に堤からすごい打球音を放ち右中間に飛ばす三塁打。次の打席は警戒され四球、次も荒れ球で四球、4打席目に今度はレフト前ヒットと、2の2で結果を残す。ロッテを戦力外になったとはいえ、NPBで3年やった経験はダテではなさそうだ。今年でまだ22歳なので、大卒の新人よりひとつ若い。すべて左打席だったけれど、スイッチヒッターとのことなので右も見てみたかった。
スタンドは数えたら50人ほどで、たぶんほとんどがペガサスのサポーター。一塁側にわずかに応援団らしき方々が旗と太鼓を持ってきていたが、ものすごい風で旗が千切れそうである。気温も低く、風で体温がどんどん奪われてしまう。上州の空っ風の威力はすごいな。
風でグラウンドの土が舞い上がり、しばしば球審が試合を止める。コンディションが悪いせいか、両チームとも守備のエラーが多かった。特にペガサスは、外野が判断を見誤って走者一掃になったり、内野の悪送球で失点を重ねたりと、ミスが続いてしまう。
ただ、ミスが続くのは悪コンディションや調整不足のせいばかりではないかもしれない。
ペガサスは昨シーズン後、退団・移籍した選手(NPB入りした選手を含め)が15人に上ったうえ、4年間監督を勤めた秦監督もNPBに復帰し、チームがまるっきり変わってしまった。そして実戦は4月上旬のこの試合が最初である。極端に言えば、新チームになってから、ペガサスはまだ「チーム」になっていないように見えた。
昨年群馬から2人がNPB入りを果たし目的のひとつを果たすことができた。一方で、低い収入で何年も野球を続ける選手がたくさんいて、その結果毎年選手の入れ替わりは激しいが、今年のペガサスのように一気に入れ替わることがある(2年くらい前の信濃もそう)。
スタンドではペガサスのファンが「○○ってどんな選手?」という会話をしている。試合途中からフランス人選手2人が加わったり、7回からマウンドに上がったアメリカ人投手は先週入団が発表されたばかりだったりして、新しい選手を覚えるのも忙しい。新陳代謝と言えば聞こえはいいけれど、プロスポーツとしてちょっと危うさを感じさせる。それはファンの目から見て「なじみの選手」が出来づらいということもそうだし、戦力を整えるという点からもそうだ。
それでもチームが勝てばファンもついてくるからいいのかもしれないが、ほぼリセットされてしまったチームを新たに作り上げる監督は大変だろうと思う。特に今年就任したばかりの五十嵐章人監督(日本石油―ロッテ他)は初めての監督経験である。
開幕まであと2週間ほどだ。